「おいしい信州ふーど」レポート
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形が牡丹の花に似ていることからその名が付いたと言われる「ぼたんこしょう」。ナス科トウガラシ属の一種で、適度な辛さと甘さがあるのが特徴です。斑尾山の麓、標高650~1000メートルにある中野市永江地区を中心に昭和初期から栽培されていました。「斑尾ぼたんこしょう保存会」の代表・大内ふじ子さんは「昔は名前もちゃんとは決まっていなくて、『辛こしょう』などと呼んで、自家用に作っていました」と話します。通常の唐辛子とは違い、栽培には冷涼な気候が適していて、「低地に植えると、辛さと甘さのバランスがうまくいかなくて。この場所じゃないと、ぼたんこしょうらしさが出ませんね」とも。
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保存会を立ち上げたのは2008(平成20)年。豊田村が中野市と合併して間もない頃でした。地元の人たちも含め20人ほどで、まとまって植えられる土地を探し、木を切り、耕して畑づくりから始めたとのこと。現在は、3ヘクタールほどの土地に3カ所、合計20アールほどの畑をつくり、年4トンほどを収穫しています。ぼたんこしょうは暑い時期のほうが成長が早く、寒暖差が大きいほど辛さが増します。「触ってみて、ちょうどいい感触のものを収穫しますが、辛いかどうかは食べてみないと分からないから困っちゃう」と笑う大内さん。熟すと赤くなり、辛さはまろやかになっていきます。
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ぼたんこしょうの販売、加工品の製造販売の事業化を目指して、2012(平成24)年には、有限責任事業組合「ぼたんこしょうファーム」を設立。6次産業化の取り組みを契機に、需要が拡大しました。毎年7月には、「斑尾ぼたんこしょう祭り」も開催しています。「加工品を作るようになって、ロスが減りました」と大内さん。「ぼたんこしょう味噌」などの加工品は中野市のふるさと納税の返礼品にもなっています。「保存会のメンバーも高齢化が進んできているので、次代に引き継げるように、より多くの人にぼたんこしょうを知ってもらいたいです。食べる人が増えることで、作る人も増えるとうれしいですね」
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斑尾ぼたんこしょう保存会
TEL:0269-38-3327
住所:中野市永江8007番地イ-1
⇒ 信州の伝統野菜「ぼたんこしょう」(「おいしい信州ふーど」図鑑)