「おいしい信州ふーど」レポート

伝えていくために、残していくために作る

山口大根の会

信州の伝統野菜「山口大根」は、上田市・山口地区で400年ほど前から栽培されてきました。以前は多くの農家が栽培していましたが、戦後の食料政策や、リンゴへの転作が進んだこともあり、一時は1戸になってしまったことも。そんな中、山口大根の種を守るために2003年、「山口大根の会」が発足。地域住民をはじめ、長野大学の学生や協力団体などが、種の保存と栽培、そして普及に取り組んでいます。

昭和初期、山口大根は野沢菜と並ぶ主要な漬物用野菜として栽培されていました。特徴は、どこか愛きょうのある形。15~20センチほどの長さで、ぷっくり膨らんだお尻にネズミのような尻尾が付いています。身が詰まった肉質は、水分が少なく、適度な辛さと甘さがあります。おろしや漬物のほか、天ぷらにすると、熱が加わって甘みが増し、「ホクホクして絶品」とのことです。

山口大根の会

2003年に地元有志が立ち上げた「山口大根の会」は、現在、約30人が会員として活動しています。もともと、山口大根は病気に弱く、気温にも敏感で難しい品種。この辺りは南向きの扇状地で水はけも良く、栽培に適しているそうです。今年の春、3代目の会長に就任した清水政明さんは、「父もずっと山口大根を作っていました。種を残すことが大変なんです」と話します。

山口大根の会
山口大根の会

会のメンバーが共同で作業している畑は約700坪。8月下旬から2回に分けて種を蒔き、その2、3週間後に間引きを行いました。ちなみに、間引いた葉っぱは「おひたしにするとおいしい」とメンバー談。11月には、何度かに分けて収穫しました。「今年は休耕地だったところで作ったものもあり、立派になった」と清水さん。収穫したものの中から、来年の種を取るために形の良いものを選んで、いったん保存します。すると、根の部分を栄養として、葉が伸びていきます。春になってビニールを張ると、白い花が咲きます。「虫たちには、普通の大根よりも山口大根が人気(笑)。おいしいのが分かるのかな」。そして取れた種を、また蒔いていくのです。

収穫した山口大根は、近くにある直売所やスーパーに卸しています。おやき用の切り干し大根は、千切りにして乾燥機で干して袋に詰めたものを清水さん自らが配達しています。地域の人たちに種を配って作ってもらい、収穫時期には翌年の種にするためにもらいに行くなど、さまざまな活動の積み重ねで、山口大根の認知度も上がってきました。最近は「作ってみたいので種が欲しい」という声もあるとのこと。山口大根を後世に残し、ずっと伝えていくために-取り組みは続いていきます。

山口大根の会

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